第三十八話:絶望の荒野

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『やってやる………!!特攻(カミカゼ)上等だ!!』 『………!?』 ここで、デニスも気づいた。 空気が変わったのだ。 敵は相変わらずの未熟者であるにも関わらず、感じる圧の段階が一回り増大している。 『最も愚かしい死を望むか………』 口では憐憫を吐きつつ、警戒心のギアを上げてゆくデニス。 死を恐れない人間ほど、始末に終えぬものはない。 「正しき死」を標榜する「教団」の一員であり、「この世界」を生きる者なら、身にしみてわかっていることだった。 不意に高まってゆく緊張感。 しかし、その張り詰めた空気を破ったのはデニスでも、ましてやイツキでもなかった。 『ッ!?な、なんだ!?こんな時にランピオンから通信!?』 それは、ライラプスGCにとっては、味方の増援を示す信号であり。 『あのアウローラとかいう連中の新手か………!?』 デニスにとっては、敵の増援が現れたことを示す信号だった。 そして。 『ランピオンより、出撃する機体を確認。数は1機です。』 アイからの報告を受けるまでもなく、イツキは勘づいていた。 現在、ランピオンが動かせる戦力は、出撃しているメンバーのものが全てである。 それでもなお、ランピオンから現れる機体となると、心当たりのあるのは、あの「イレギュラー」くらいしかいない。 『まさか………!!』 思わず、視線をランピオンを送ろうとした瞬間、「その機体」は。 「鋼鉄の弧狼」は、放たれた砲弾の如く一直線に、ライラプスGCへ並び立つかの如く戦場へ姿を現すのだった。 『システム、オールグリーン………内蔵エネルギーも満タン、各部の操作も軽い………どうやら、問題はないみたいだな、ミッターナハト。』 『ミッターナハト………!!』 『正確な機体名は、ゲシュペンストMk‐Ⅲ。彼と共に発見されたお宝の1つ。あの青いPTのことですね。』 『と、ということは、お前、あのシンヤとかいうガキか!?』 『ご挨拶だな。お前にだけは、ガキ扱いされたくねぇよ。』 『な、なんだと、この!!』 イツキが剥き出しの感情と怒気を投げかけてくるも、最早シンヤはまるで意に介さぬといった様子で、前方の敵機。 即ち、デニスのエルシュナイデへと意識を向けている。 『ククク………お目にかかれて光栄といったところかな、狼の半身(ヴェアヴォルフ)。』 『狼の半身(ヴェアヴォルフ)………?オレのことかよ………!!』 初耳の単語だった。 しかし、否が応にも、連想してしまう。
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