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『やってやる………!!特攻上等だ!!』
『………!?』
ここで、デニスも気づいた。
空気が変わったのだ。
敵は相変わらずの未熟者であるにも関わらず、感じる圧の段階が一回り増大している。
『最も愚かしい死を望むか………』
口では憐憫を吐きつつ、警戒心のギアを上げてゆくデニス。
死を恐れない人間ほど、始末に終えぬものはない。
「正しき死」を標榜する「教団」の一員であり、「この世界」を生きる者なら、身にしみてわかっていることだった。
不意に高まってゆく緊張感。
しかし、その張り詰めた空気を破ったのはデニスでも、ましてやイツキでもなかった。
『ッ!?な、なんだ!?こんな時にランピオンから通信!?』
それは、ライラプスGCにとっては、味方の増援を示す信号であり。
『あのアウローラとかいう連中の新手か………!?』
デニスにとっては、敵の増援が現れたことを示す信号だった。
そして。
『ランピオンより、出撃する機体を確認。数は1機です。』
アイからの報告を受けるまでもなく、イツキは勘づいていた。
現在、ランピオンが動かせる戦力は、出撃しているメンバーのものが全てである。
それでもなお、ランピオンから現れる機体となると、心当たりのあるのは、あの「イレギュラー」くらいしかいない。
『まさか………!!』
思わず、視線をランピオンを送ろうとした瞬間、「その機体」は。
「鋼鉄の弧狼」は、放たれた砲弾の如く一直線に、ライラプスGCへ並び立つかの如く戦場へ姿を現すのだった。
『システム、オールグリーン………内蔵エネルギーも満タン、各部の操作も軽い………どうやら、問題はないみたいだな、ミッターナハト。』
『ミッターナハト………!!』
『正確な機体名は、ゲシュペンストMk‐Ⅲ。彼と共に発見されたお宝の1つ。あの青いPTのことですね。』
『と、ということは、お前、あのシンヤとかいうガキか!?』
『ご挨拶だな。お前にだけは、ガキ扱いされたくねぇよ。』
『な、なんだと、この!!』
イツキが剥き出しの感情と怒気を投げかけてくるも、最早シンヤはまるで意に介さぬといった様子で、前方の敵機。
即ち、デニスのエルシュナイデへと意識を向けている。
『ククク………お目にかかれて光栄といったところかな、狼の半身。』
『狼の半身………?オレのことかよ………!!』
初耳の単語だった。
しかし、否が応にも、連想してしまう。
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