第三十八話:絶望の荒野

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『ア、アイ、正気かよ!!あんな奴の手を借りるだなんて………!!』 『しかし、現状、このままでは敗色濃厚です。ここは、使えるものは全て使い、状況を切り抜けるべきかと。』 『だ、だけどよ………』 『アウローラのメンバーを助けるためです。ここは、割りきっていきましょう。』 『ッ………!!』 5秒間。 イツキの脳は、最大に回転し、深く悩んだ。 シンヤへの嫌悪感。 己の不甲斐なさ。 そして。 このままでは、アウローラメンバーの「死」はほぼ確定だという、変えがたい事実。 『シンヤ・ナンブ。改めて、返答を。』 『………』 シンヤは、無言だった。 アイもまた、伝えるべきことは伝えたと、これ以上は何も言わない。 『………頼む………』 『………!?』 『頼むよ。力、貸してくれ。アウローラの皆を、助けたいんだ………』 イツキの選択は、シンヤに頭を下げることを選んだ。 そして、真っ向から、シンヤに共闘の願いを口にしたのだった。 『………いいぜ。』 『そ、それじゃあ………!!』 『元から、あいつら………あの害虫(ムシ)の力を好んで使うような連中は、潰してやるつもりだった。一緒にやりたいなら、好きにしろ。ただし、足は引っ張るなよ、ガキ。』 『こ、こいつ………!!やっぱり、いけ好かねぇ!!』 『落ち着いてください、イツキ。即席ですが、2機の連携パターンを構築してみました。そちらにもデータを転送しますので、確認してください、シンヤ・ナンブ。』 『………必要ねぇよ。』 『別に、この通りに動いてくれというわけではありません。しかし、お互いの機体の特性や、動きのクセなど、最低限の情報は知っておくべきでしょう?参考にしてくださるだけで結構です。』 言うが早いか、ミッターナハトのコックピット内に送られてくる、ライラプスGCとのコンビネーションデータ。 シンヤは、やれやれといった様子で呟くように口を開いた。 『あんた、AIのくせに、パイロットよりよっぽど大人だな。』 『お褒めの言葉と受け取っておきます。さて、時間もないことですし、そろそろ始めましょう。頼みましたよ、イツキ。』 『クソッ………!!しくじるんじゃねぇぞ、ガキ!!』 『お前こそな、ガキ。』 再び、凄まじい突進にて飛び出してゆくミッターナハトと、ライラプスGCの多弾頭ホーミングミサイルが放たれたのは同時のことだった。 『ここだ………!!』 ミッターナハト左腕の固定兵装、5連チェーンガンが火を吹くが、狙いは上空にいるデニスのエルシュナイデではない。
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