第三十七話:魔犬は吠え、孤狼は目覚める

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『………!!』 だが、ここで退くわけにはいかない。 司祭は、賭けに出ることにする。 『全機、飛べ!!』 司祭の指示と同時に、残されたエルシュナイデ部隊が空中へと飛び上がっていった。 小型とはいえ、テスラドライブを搭載しているエルシュナイデの空中地形適応能力は高く、実に滑らかな離陸であったと言える。 『あのライラプスという機体は、陸戦機。こうして、上空から攻めれば、手も足も出せまい!!』 司祭の判断は、的確だったと言える。 戦いにおいて、制空権の取り合いは殊更重要視される要素であり、頭上を抑えられたなら、それこそワンサイドゲームになる可能性も低くはないのだ。 『頭を使いましたね。あれだけ高空から射撃メインで来られたら、少々厳しいことは確かです。』 『あんにゃろ、姑息な真似を!!男なら、正々堂々降りてきて戦えってんだ!!』 『各機、構え!!攻撃開始!!』 地上にてやきもきするライラプスを尻目に、エルシュナイデ部隊の一斉射撃が始まった。 Gリボルバー、Gレールガン、ツインビームカノン。 種々様々な発砲音が不協和音を奏で、鉛とビームの礫を雨霰のように降らせてゆく。 『こ、このッ!!』 『回避運動に専念せざるを得ませんね。決して被弾しないでくださいよ、イツキ。』 『言われるまでもねぇ!!』 ライラプスは、縦横無尽に駆け巡り、1発の被弾も許さなかった。 なるほど、大した運動性、パイロットの能力も低くはない。 だが、それだけ。 『次弾装填!!間断なく撃ち続けよ!!相手は疲れ、直に被弾を許すはず!!』 地上からディバイデッドライフルで応戦しようが、高低差を鑑みるに、ライラプス側の攻撃は著しく命中率が低下してしまう。 つまり、どれだけ撃たれようが怖くはないのだ。 翻って、エルシュナイデ部隊はじっくりと狙いをつければ、まず的を外しはしないという圧倒的に有利な状況。 このままでは、遠からずライラプスは捉えられてしまうだろう。 『くっそー………さすがに空を飛ばれたら、こっちが不利だぜ。どうする、アイ?』 『ならば、こちらも切り札を切るとしましょう。いよいよ、このDOGの真価を発揮する時です。』 『任せた!!そういう小難しいのは、オレの性には合わねぇしな。』 繰り返すが、ライラプスはあくまでも陸戦機。 バーニアを全開に跳躍くらいはできるだろうが、空を縦横無尽に飛び回るテスラドライブ搭載機の前では、叩き落とされて終わりだろう。
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