第三十七話:魔犬は吠え、孤狼は目覚める

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如何に高く跳べる生物だろうと、翼を有する鳥には絶対に追い付けない。 これは、動かしがたい事実である。 『DOG、アナライズスタート。現在の戦局に関するあらゆるデータをインプット。然る後、最適解を構築。』 戦闘用自立思考型人工知能、通称アイ。 その特性の1つに、情報データを取り込み、自身のデータとする高い学習能力。 更にインプットされた収集データを基に、臨機応変に考え、「解答」を導き出すことも可能な、まさしく超高性能AIである。 『………と、機械的なノリで言ってみましたが、答えは至極単純。向こうが飛べるなら、こちらも飛べるようになればいいだけの話です。それも、より速く、より強く。』 『………いいね、いいね。そういう脳筋な発想、大好きだよ。いいから、早くなんとかしてくれ!!』 『では、リクエストに応えて。DOG、起動。』 これまで、ライラプスの傍らで付かず離れず、ともすればただ浮かんでいるだけだったDOGより、高エネルギー反応が検出。 それを空中から捉えた司祭は、驚きつつも声を上げる。 『撃てェッ!!奴らが何をしたいのかなど関係ない!!事に移る前に墜とすのだ!!』 再び放たれる、エルシュナイデ部隊の一斉射撃。 先ほどよりも狙いも威力も高い一撃が、束になりライラプスを襲う。 『………!!』 着弾。 轟音、爆炎、そして舞い上がる黒煙と砂塵。 掛け値なし、全火力を集中した一撃だった。 『敵機の反応は!?』 『あ、ありません!!ありませんが………』 歯切れの悪い報告だった。 信徒は、怯えた様子で更に続ける。 『ま、まだ炎や煙で隠れているため、確たることは言えませんが………敵機の残骸や、コックピットブロックの脱出も未確認です………』 ライラプスの運動性では回避が不可能な、完璧なタイミングだった。 普通に考えれば、パイロットは脱出する間もなく、機体は粉微塵に砕け、撃墜の確認すら困難な状況と言える。 『な、何を狼狽える!?教敵は、我らが攻撃により灰塵に帰した!!それ以外になに』 突如、全エルシュナイデのコックピット内に攻撃警報が響いた。 そして、驚き、身構える暇もなく、1機のエルシュナイデが頭頂部からエネルギー弾をくらい、撃墜されてしまう。 『な、なんだとォッ!?』 即ち、己らの遥か上空より攻撃されたのだ。 思わず、エルシュナイデ部隊が一斉に頭上を見上げると、「その機体」は当たり前のように空中に鎮座していた。
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