祭りの夜

2/3
前へ
/113ページ
次へ
「今回…も?」 「そう、今回(・・)もだよ」 サラダと頼んだチーズが置かれた所で、淳はポカンと口を開けた。 「え、昂大、そんなに振られる程彼女居たの?」 確かに、大学時代と就職していた数年は離れていた。 けれど、その間も皆で集まっていた。 紗奈の恋バナが多かったけれど、誠に彼女が出来た時も報告があったし、淳もすぐに別れたけれど一応報告はした。 昂大だけが隠していたのか。 「お前、俺結構声かかるんだぞ」 ……昂大は、背も高いし顔も整っている。 細マッチョの草食系が好きな女性にはモテないとは思うけれど。 「何で教えてくれなかったのよ、リアルタイムで知りたかったなー」 「んで、酒のツマミにされんだろ?紗奈に根掘り葉掘り聞かれんのがウザイ」 そこは否定できない。 紗奈は何より恋バナが好きだ。 「まぁ、確かに」 だろ、と相槌を打って昂大がグラスを傾ける。 普段汗だくで焼き鳥を焼いている時とは違い、何となくここにも馴染んでいる気もしてきた。 淳はこんな所にデートに来た事は無いけれど。 昂大はこんな所に彼女を連れてきて、デートしていたのだろうか。 何だかとても、自分が未熟に思えてしまった。 「……皆、大人になったんだなぁ…」 昂大は変わらず自分に接してくれていたから、何となく同じ気がしていたけれど。 子供のままなのは、自分だけなのだ。 「お前も大人になったんだろーが、同い年だぞ」 「…うん」 昂大にも言えていない、未だに深い関係になるのに二の足を踏む自分を。 別れた原因も、波長が合わないと嘘をついたから。 「お前も、その気になれば出来るんじゃないの?…顔もスタイルもそこそこなんだし」 「そこそこって何よ、バカ昂大!」 「その口がネックだなぁ」 もう一杯ずつゆっくり飲んで、席を立ったのは十一時過ぎだった。 「え、いいの?」 昂大が会計を済ませてくれて、ドアを開けてくれた。 「ん、次お前な」 「うん、ありがとう」 もう一杯くらい飲んでも良かったのだが、二杯目が終わる頃に女性客が一人でカウンターに座った。 綺麗に着飾った美人さんだったのだけれど。 その女性はマスター狙いだった。 妙に甘い声で、マスターに話しかけていて。 マスターは例の営業スマイルでサラりとかわすのだけれど、何となくゆっくり飲む雰囲気ではなくなったのだ。 二人でまた、のんびり歩き出した。 昂大が送ってくれるのはもう、いつもの事だ。 「あの人、めっちゃロックオンしてたな」 「ね、すごいね」 自然とあの女性の話しになる。
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2652人が本棚に入れています
本棚に追加