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「今回…も?」
「そう、今回もだよ」
サラダと頼んだチーズが置かれた所で、淳はポカンと口を開けた。
「え、昂大、そんなに振られる程彼女居たの?」
確かに、大学時代と就職していた数年は離れていた。
けれど、その間も皆で集まっていた。
紗奈の恋バナが多かったけれど、誠に彼女が出来た時も報告があったし、淳もすぐに別れたけれど一応報告はした。
昂大だけが隠していたのか。
「お前、俺結構声かかるんだぞ」
……昂大は、背も高いし顔も整っている。
細マッチョの草食系が好きな女性にはモテないとは思うけれど。
「何で教えてくれなかったのよ、リアルタイムで知りたかったなー」
「んで、酒のツマミにされんだろ?紗奈に根掘り葉掘り聞かれんのがウザイ」
そこは否定できない。
紗奈は何より恋バナが好きだ。
「まぁ、確かに」
だろ、と相槌を打って昂大がグラスを傾ける。
普段汗だくで焼き鳥を焼いている時とは違い、何となくここにも馴染んでいる気もしてきた。
淳はこんな所にデートに来た事は無いけれど。
昂大はこんな所に彼女を連れてきて、デートしていたのだろうか。
何だかとても、自分が未熟に思えてしまった。
「……皆、大人になったんだなぁ…」
昂大は変わらず自分に接してくれていたから、何となく同じ気がしていたけれど。
子供のままなのは、自分だけなのだ。
「お前も大人になったんだろーが、同い年だぞ」
「…うん」
昂大にも言えていない、未だに深い関係になるのに二の足を踏む自分を。
別れた原因も、波長が合わないと嘘をついたから。
「お前も、その気になれば出来るんじゃないの?…顔もスタイルもそこそこなんだし」
「そこそこって何よ、バカ昂大!」
「その口がネックだなぁ」
もう一杯ずつゆっくり飲んで、席を立ったのは十一時過ぎだった。
「え、いいの?」
昂大が会計を済ませてくれて、ドアを開けてくれた。
「ん、次お前な」
「うん、ありがとう」
もう一杯くらい飲んでも良かったのだが、二杯目が終わる頃に女性客が一人でカウンターに座った。
綺麗に着飾った美人さんだったのだけれど。
その女性はマスター狙いだった。
妙に甘い声で、マスターに話しかけていて。
マスターは例の営業スマイルでサラりとかわすのだけれど、何となくゆっくり飲む雰囲気ではなくなったのだ。
二人でまた、のんびり歩き出した。
昂大が送ってくれるのはもう、いつもの事だ。
「あの人、めっちゃロックオンしてたな」
「ね、すごいね」
自然とあの女性の話しになる。
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