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ⅶ
「オーディンは怖がりなくせに強がりすぎよ」
言葉とは裏腹にお礼のマカロンをもらったステラは上機嫌だった。結局真相は、ステラの推理通りで解決した。オーディンにとって、その確認には勇気がいっただろうけど。そして噂は、ステラが魔女を退治した『魔女の手事件』と入れ替わっていた。
「噂はそのままでいいのかい?」
「英雄伝だしねー。わざわざ桜の想い出に傷をつけることもないじゃない?」
「ステラは探偵に向いてるかもね」
「ええ!? どこがよ」
「観察力もあるし勘もいい。いっそ助手にでもなってみたら」
「冗談でしょ。でも小遣い稼ぎには良さそう。みんなの相談を聞いてまわろうかな」
「君らしいね」
人を思いやる気持ちがあるとは言わなかった。
「もしかして桜を好きになれた?」
多少の期待をもって聞いてみた。
「どうかな。でもオーディンのお母さまのお墓にいったら、嫌なイメージは消えるかも」
「そっか。そしたらホームパーティーも楽しくなるね。オーディンも喜ぶ」
「それは全然別の話でしょ」
「でもオーディンのイメージも変わったろ?」
「どこがよ。まともに目も見ないで袋を突きだしてきてさ。これがお礼? お父様に渡されただけでしょ」
苦笑いしかできなかった僕は、ステラを追い越して両手を頭の後ろで組んだ。
「あー。そう言えば、新しいメイドさんは元パティシエだって言ってたな」
「行かないとは行ってないじゃない!」
後ろからステラが駆けてくる音が聞こえた。
〈忍び寄る魔女 おわり〉
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