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「だから僕は桜が嫌いなんだってば」
女の子なのに僕というクラスメイトのステラは、夢の話をすると腕を組んで頬を膨らませた。
「マカロンで作ったケーキもあるけど」
「行かないとは言ってない」
教会では食べられないマカロンと、それで作ったケーキという合わせ技で、僕はステラの興味を誘った。
僕もステラも同じ教会の児童介護施設出身だ。だから甘くて美味しい話に猜疑心をもってしまうのも分かっていた。あれ? それじゃ逆効果かな?
「庭に桜があるなんて凄いけど、オーディンはただそれを口実にホームパーティがやりたいだけなんだよ。ステラなら分かるでしょ?」
「そりゃ友達いないもんね。どうせ豪邸を自慢したいだけなのバレてるんだし。ミカエルだって分かってるんでしょ?」
「そりゃね。でも金持ちだって孤児だって、僕たちは好きでなった訳じゃないんだし」
「いい人すぎだよミカエルは」
ステラは僕の話に声をかぶせてきた。
「わかったよ。じゃあ僕ひとりで一頭分のローストビーフをいただいてくるよ」
「行かないとは言ってないじゃない」
ステラは肩にのった赤毛をかきあげた。そして僕らは、春休みにオーディンの家に招かれることとなった。
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