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 絵画のコレクターのお父さんをもつオーディンの家は大邸宅だった。特に自慢の園庭は、綺麗な芝生に踏み入るのに勇気がいった。画家をしている母の家も大きいけれど、周りは林のようで園庭があるオーディンが少し羨ましかった。  僕とステラはメイドさんの案内で園庭に並べられたテーブルに着いた。見渡すと二階の窓に細い枝を伸ばす桜の樹があった。幹も細いけれど、たくさんの花をつけた姿に生命力を感じた。ステラに眼を移せば、もうテーブルの上のご馳走だけを見つめている姿に生命力を感じた。 「来たかミカエル!」  招待主の登場に、僕もステラも一瞬顔を見合わせてしまった。それはオーディンが胸元にフリフリのが付いた、食事をするには相応しくない貴族の衣装を着ていたからだ。 「や、やあ。今日はご招待ありがとう」  僕は立ち上がると、なんとか冷静に挨拶をしてステラを肘で突いた。 「あ、ありがとうオーディン」  ステラも立ち上がり引きつった笑顔で挨拶をしていたけど、オーディンは関心なさそうにフンと鼻を鳴らした。 「家の物には触るなよ。何も持っていなくてもポケットには手を突っ込むな」 「ちょっと、それ」  喰ってかかろうとしたステラの前に、僕は腕を出した。ステラを泥棒扱いしたオーディンの言葉に僕も腹が立ったけど、桜を指さして「聞いてはいたけど綺麗だね」と意識をそらした。 「だろ。わざわざ東の国から輸送して植えたんだ」 「すみません。ナイフとフォークは触ってもいいですか?」 「え、ええ! さ。召し上がって」  ステラがわざとオーディンの言葉を遮ってメイドさんに尋ねた。慌ててメイドさんが動き出すと、僕とオーディンも席に着いて食事をはじめた。
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