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ⅲ
『みんなの気を引くために嘘まで言い出した』
9月になると良くない噂が流れはじめた。その発端は、夜になると部屋に魔女が現れるとオーディンが言い出したからだ。
「ねえ。君はどう思う? オーディンの噂」
学校の帰り、僕はステラがどう思っているのか聞いてみた。
「火のない所に煙はたたず。日頃の行いが火種じゃない?」
「そうだけど。嘘つくにしても魔女が来るなんて」
「まあ、オーディンだとしても幼稚すぎよね」
まったく興味のない口ぶりで、ステラは歩道の縁石に飛び乗った。僕は答えを期待せずに、その背中に問いかけた。
「真相を確かめに行ってみない? オーディンの部屋に」
「いいよ」
「……えっ! いいの!」
あっさりと返ってきたイエスに、受け取る間ができてしまった。きっと嫌がられると思っていた。
「なんで? いいよ、別に暇だし。これが本当なら怖がってるオーディン見たいし」
振り向いたステラは、わざと肩をゆらしてシッシと笑った。
「悪趣味だなー」
「好奇心旺盛と言って」
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