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「ステラは桜が嫌いなんだよ」
「ええ! だってホームパーティーに」
「桜は見てなかったろ?」
僕の言葉にオーディンは少し悲しそうな顔をした。
「ねえオーディン。あのガーデンハウスみたいなの前もあった?」
窓の外をのぞくと、桜を見下ろした先に木の箱とガラスの箱をくっ付けたような小屋があった。僕も前回見た覚えがない。案外ステラも見ていたんだなと驚いた。
「ああ。あれは父さんがテラリウムを作る作業小屋として最近作ったんだ」
テラリウムは透明なガラス容器の中で、主に植物を育てるインテリアみたいなものだ。
「テラリウムも桜も、母さんが好きだったんだ」
「そうだったんだ」
僕は桜に視線を移した。オーディンのお母さんは亡くなっていた。本当のお母さんがいないというのが、僕とステラとオーディンの共通項でもあった。もしかしたらミッシェルの息子となれた僕を羨んだりもしているのかなと、その時思った。
「うっ!」
声をあげて突然ステラが後ろに倒れてきた。僕が咄嗟に受け止めると、その目は焦点が定まっていないみたいだった。そして「お母さん。あれはお母さん?」と言って僕の服を掴んだ。
「ステラ? ステラ! しっかり!」
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