「朝露のひと」

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「朝露のひと」

 あのひとは薄暗い気持ちを知っていた  きっとまだ春告げる小鳥の声に胸弾ませる夢見てる  何度でもその硝子のような膝を割って  挑むような赤く燃え滾るマグマが爆ぜている  涙は朝露のひと  もう一つをあげたい  それは咲き乱れる夏草の綿毛になる頃  心と言う剥き出しの神経のひだを撫でて空へ行く  掴めない空へ行く  包み込む空を抱く  ねんねんころり、ねんころり  少し休もう  走り出すあのひとは朝露のひと  握りしめていた力は弱く  すり抜けて行く指先を  追いかけはしない朝露のひと  止めないよ行って早くもっとずっと届かないくらい遠くまで  行け 行け 行け 行け 行け  振り返らずに、行ってね。  きっと、最後まで、行けると信じています。  朝露のひとへ       羽根のない私より fac0ad9d-3c98-41d4-8ca1-9242843b87c5 詩/アクリル画・うた子
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