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「この現象は雨って言うんだって」
少年が得意げに隣を歩いている少女に言う。
「知ってるよ。お母さんが言ってたもん。でも、雨は体に悪いから当たっちゃいけないんだって」
「げ。まじかよ。だから傘なんて物が売られているんだな」
少年は自分の差している紺色の傘を見上げる。
そんな少年たちの隣を少し大きい男女が通っていく。二人は一つの傘に二人で入る、今流行りのあいあい傘をしていた。好きな人と一緒に入るというものである。
「今のお姉さん達、……あいあい傘してたね」
「そうだな」
いいなあ。少年は自分の心の声がもれたかと思った。しかし、隣の少女が口に手を当て、顔が紅色に染まってるのを見て、少女の声だったのだと悟る。
「……俺とあいあい傘してくれますか?」
少女の顔に大輪の花が咲く。
「はい!」
二つ並んでいた傘は一つになった。
◇
「アミ、アミ。“あいあいガサ”だって。スキナヒトと一緒に入るのがいいんだって」
僕は寝ているアミを揺らす。ヒトはそんなものを作ってしまうのか!
でも……。
「ヒトはアメに濡れるのが嫌なんだな」
アミは目を開かず言った。
「うん。僕もそう思った。昔はアメの下でみんな遊んでて、アメがなかったらお祈りするくらいなのに」
僕は少し悲しくなった。
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