僕のホシの物語

3/5
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「この現象は雨って言うんだって」  少年が得意げに隣を歩いている少女に言う。 「知ってるよ。お母さんが言ってたもん。でも、雨は体に悪いから当たっちゃいけないんだって」 「げ。まじかよ。だから傘なんて物が売られているんだな」  少年は自分の差している紺色の傘を見上げる。  そんな少年たちの隣を少し大きい男女が通っていく。二人は一つの傘に二人で入る、今流行りのあいあい傘をしていた。好きな人と一緒に入るというものである。 「今のお姉さん達、……あいあい傘してたね」 「そうだな」  いいなあ。少年は自分の心の声がもれたかと思った。しかし、隣の少女が口に手を当て、顔が紅色に染まってるのを見て、少女の声だったのだと悟る。 「……俺とあいあい傘してくれますか?」  少女の顔に大輪の花が咲く。 「はい!」  二つ並んでいた傘は一つになった。    ◇ 「アミ、アミ。“あいあいガサ”だって。スキナヒトと一緒に入るのがいいんだって」  僕は寝ているアミを揺らす。ヒトはそんなものを作ってしまうのか!  でも……。 「ヒトはアメに濡れるのが嫌なんだな」  アミは目を開かず言った。 「うん。僕もそう思った。昔はアメの下でみんな遊んでて、アメがなかったらお祈りするくらいなのに」  僕は少し悲しくなった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!