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「おい、どういうことだ!この間は雨が全然止まないと思ったら今度は全く降らないじゃないか!このままじゃ人間は死んでしまうぞ!」
男は機械のたくさんある部屋で叫んでいた。そんなふうに叫ぶ男は一人じゃない。
「おい、海の水も少なくなってきてる。このままじゃ近いうちに干上がってしまう!」
「そうなったらいよいよこの星はおしまいだ!」
男たちは走り回る。あちこちにこの真実を知らせるために。
少し時は進む。
「お母さん、水が欲しいよ。喉が乾いて、頭がクラクラするよ」
女が小さい自分の子を抱えている。
「ごめんね。さっきのが最後だったんだ。もう少し貰えないか聞いてみるよ」
「お母さん……死んじゃやだ……」
「大丈夫。お母さんは、ここにいるから」
女は自分の水を子にやった。この分だと限界を迎えるのは子より先に女の方だろう。
「ああ、神様。どうかいるならせめてこの子だけでもお助けください」
女の悲痛な祈りは天に届くことはないだろう。
また少し時は進む。
「ははは、もう周りに生きている人は俺だけじゃないか。……こいつも、もう息がない」
男は膝の上に載せた女の頭を撫ぜる。
「この星のはしからはしまで行ったら、他に生きている人はいるんだろうか。……まあ、俺ももう限界だ」
男は女の上に被さるようにして、息絶えた。
◇
「ああ、ほらやっぱり、水がなければ上手くいかないんだ」
僕はクツクツ笑う。もう何が可笑しいのかが分からない。周りの暗闇に自分自身も侵されているみたい。
「あーあ。せっかく作ったのにこのホシはもう駄目みたいだ。これはもう壊すしかない」
僕は手のひらに乗っけたホシを握る。簡単に手中に収まったそれはたやすくパリンと割れた。
そこで一筋の光が僕の目の前から差した。そこへ手を伸ばすと光から手を掴まれる。その手を頼りに僕は飛んだ。
光から出ると、それはアミの手だった。心配そうな顔をしている。
「……手遅れだったか」
アミの視線は僕の右手に注がれていた。手を広げると、そこには粉々になった茶色い破片があった。前はあんなに綺麗な水色だったのに。
僕の前から闇が解かれていく。
「あ……あ……」
僕またやっちゃったんだ。また一つ星を壊しちゃった。
「また……壊しちゃった……」
「……うん。そうだね」
僕の目から水滴が落ちる。いつもこうだ。上手くいかなかったら壊して、また新しいのを作る。本当にこのホシに生きているモノは何もなかったのだろうか。僕が感じ取れなかっただけじゃないのか。
肩に何かが乗る。それはアミの手だった。
「大丈夫。今度はきっと上手くいくよ」
「……うん。頑張る」
……そうは言ったけど、僕の心は完全に闇に侵されたみたいだ。一時は解けたと思った闇がまた僕を飲み込む。
今度作る星はどんなふうに壊れるのか、楽しみだ。
僕は、笑った。
Fin
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