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 中学時代の友人と居酒屋の前で別れてすぐ、携帯が鳴った。二十三時三分。辺りはまだ人通りが多く、会社員らしきスーツの人も見受けられる。夜の暗さの中に居酒屋や広告の看板が光として浮かび上がっている。僕のスマートフォンの光なんて、弱々しい。 「遅い」  電話をとると、開口一番それだった。 「ごめん、酔ってて」  本当はあまり酔っていない。 「はあ、酒かよ。この時期のお前の酒とか心配にしかならねえよ」 「別に、兄さんのことじゃない。中学のときの同級生と飲んでただけ」 「まあいいけど」  高校時代の友人だ。兄が死んで、僕が呆然としながら毎日を過ごしていた時期を知っている。親友と呼ばれる類だ。高校を卒業してからも気づかって、毎年この時期になると体調を崩す僕に電話してくる。そして、地元からわざわざこちらまでやってくるのだ。 「明後日、そっち行くから」 「え?」  唐突すぎる。 「土日休みだろ。土曜の夜、飲もうぜ」  僕は返事ができない。返答も待たずに切れた電話をポケットに押し込み、帰ろう、と思った。
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