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「ほな、逃走者の景品を聞いたところで、鬼側の景品に移ろか!鬼側の上位3人は〜」
何事も無かったように岬くんが進行を再開する。
鬼側のトップとして呼ばれたのは…
「3位、坂下詩乃!」
「!」
いきなり知ってる名前が呼ばれたからびっくりしちゃった…
逃げる側も大変だけど鬼側の方が入賞するの大変だと思うのに3位に入るなんてしのくんすごいなぁ…おれは絶対入れない自信がある…
そして2位の人も呼ばれ、残すは1位だけ。
「1位はーーーー」
進行になれているのか、勿体ぶるように溜めを作る岬くん。
おれが呼ばれる訳でもないのに変にドキドキしてきた。1位は誰なんだろう…
「神崎愛瑠!」
やはり盛り上げが上手いのか、生徒たちのノリがいいのか、発表後うぉー!とかきゃー!とかの冷やかしの声が多く上がる。聞いていてとても楽しそうですごいいい雰囲気…
「うるせー!!俺のことが好きだからって騒ぐなー!」
楽しげな雰囲気をぶち壊すように響き渡る甲高い声。
それは今みんなに表彰されようとしていた愛瑠くんのものだった。
そんなにうるさかったかな…とは思うけど、感じ方わ人それぞれだし愛瑠くんは音に敏感だったりするのかも。
周りを見渡せば、先程がいい雰囲気であったためにそれを壊した愛瑠くんへ視線が集まっていた。
その視線の中には、色々な感情が含まれていて、でもその大半は非難するような視線だった。
雰囲気を壊されたこと、大きな声で騒がれたこと、それ以外にも愛瑠くんの容姿を見て不快に思った人など様々な原因ではあるけど、今愛瑠くんは自業自得とはいえ多くの悪意ある視線に晒されている。
ーあの時みたいに。
「たす…な…きゃ」
ぼくは、おくびょうものだ。
自分にその視線が向いたら動けなくなるくせに他人にその視線が向けられているのを見たら可哀想になって助けようとする。
ーでもどうせ僕が行ったって何も出来ないよ。
そう…かも…
おれなんかが助けに行くよりも誰かが助けに行くのを待った方がいいかもしれない。
そもそも愛瑠くんはこんな視線で何も思わなかったりするかもしれない。教室の時はあまり気にしていない様子だった。
いつの間にか俯いてしまっていた顔を上げてもう一度愛瑠くんを見る。
すると、不思議そうに、周りを見ていた。
ー彼は、昔のぼくだ。助けなきゃ
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