第一章・次代の王

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「おはよ、ブレイラ!」 「おはようございます。朝から元気ですね」 「うん! きょうは、あにうえがかえってくるから、うれしいの!」 「ふふふ、そうですね」  私にぎゅっと抱き着いてニコリと見上げてくる。  とても可愛らしい笑顔に私の顔も綻びます。 「あ! ちちうえ、まだねてる! ちちうえ~!」  ゼロスはベッドにハウストを見つけると、今度は彼に狙いを定めます。  ぴゅーっと駆け寄ってベッドによじ登る。そして、ドーン! 勢いよく飛び乗りました。 「えいっ! ちちうえおきてー! ちちうえ~!」 「ぐっ……! この、ゼロス……っ」  ハウストの上ではしゃぐゼロスに、彼が煩そうに顔を出します。 「……重いぞ」  ハウストは迷惑そうにしながらもゼロスの小さな体をひょいと持ち上げて上体を起こしました。 「朝から騒がしいな、ゼロス」 「さわいでないもん。ちちうえ、おはよー」 「おはよう」  ハウストは挨拶を返しつつ、騒いでいるだろと呆れた顔をしている。  でもそんな顔をしながらも仕方ない奴だと笑っています。  それは普段と同じ朝の光景で、私はどこかほっと安堵しました。 「ゼロス、乱暴な朝の挨拶ですね」  私も側まで行くと、ゼロスがハウストに抱っこされたまま見上げてくる。  可愛らしい眉を八の字にして反省の顔です。 「いきなり飛び乗ってはいけません。びっくりしてしまうでしょう」 「ごめんなさい、ブレイラ。だっこ」 「……まず俺に謝れ」  ハウストは苦笑しながらもそう言うとゼロスを差し出してくる。  ハウストからゼロスを受け取ると、ゼロスが小さな体でぎゅっと抱き着いてきました。  私もゼロスをぎゅっと抱きしめてハウストがいるベッドに腰を下ろします。 「あなたも目が覚めたようで良かったです」 「強制だったがな」  ハウストは肩を竦めて言うと、ゼロスを抱っこしている私に手を伸ばす。  肩をそっと抱き寄せられて頬に口付けられました。 「ブレイラ、今日も美しいな」 「もう朝ですよ……」 「関係ない。いつも思っている」  そう言って今度は反対側の頬に口付けてくれる。  恥ずかしいです。でも嬉しくて口元が緩んでしまいます。 「あなたも今日も素敵です」  私もハウストの頬にお返しの口付けをすると、彼はとても嬉しそうに破顔しました。  さあ、今日から四大公爵会議の始まりです。頑張りましょうね。
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