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「フェリシア、この前は贈り物をありがとうございました。南の作物は色彩が豊かですね。初めて目にする果物もあって驚きました。皆で頂いたのですが、ゼロスが美味しいと気に入ってあっという間に食べてしまったんですよ?」
「それは良かったです。また贈らせていただきますね」
一ヶ月前、フェリシアから贈り物が届けられました。南の領地の特産品が旬を迎えたということで献上されたのです。とても上等な果物を贈っていただきました。でも、その中に一つだけ気になるものが……。
「贈って頂いた中に、もしかしてと思う物があったのですが、……もしかして?」
私が問うとフェリシアが少し恥ずかしそうに微笑みます。
「……やはり気付かれてしまいましたか。はい、私の実家で収穫した麦も一緒に贈らせていただきました。私はお目汚しになると反対したのですが、リュシアン様が……」
「あのリュシアンがっ……」
意外です。
リュシアンとはいろいろあったので私の彼に対するイメージは偏っているのです。だから驚いてしまったじゃないですか。
驚きを隠し切れない私にフェリシアが申し訳なさそうな顔になる。
「……やはりご迷惑だったでしょうか」
「とんでもないっ、あのリュシアンがと驚いてしまっただけなんです! とても嬉しかったですよ。大事に育てられたのですね、黄金色に輝く良い麦でした」
「ありがとうございます」
フェリシアが丁寧にお辞儀します。
嬉しそうな彼女の姿に南の大公爵夫妻の幸せそうな様子が伺えました。
こうして私たちも談笑を楽しんでいると、メルディナが女官に何ごとかを命じています。
しばらくすると一人の女官が赤ん坊を抱いてサロンに姿を見せました。クロードです。
「どうやらお昼寝から目が覚めたようですわ。ここに呼んでもよろしくて?」
「もちろんです。クロードも一緒なんて嬉しいですよ」
私が答えると女官がクロードを抱いて私の前までくる。
私の前に差し出されたクロードは寝起きのようで、小さな鼻をむずむずさせたり目を細めたり。可愛いです、たくさんお昼寝ができたようですね。
「見せていただいてありがとうございます。メルディナの所へ」
「困りますわ。わたくし、今はお茶を楽しみたい気分ですの。だから王妃がそのままその子をあやしてやってくださいませ」
「ええっ、あなたはまたそんな……」
呆れました。
クロードを産んで少しは大人になったかと思ったのに。
しかもこういった事は今ばかりではありません。昨日初めてクロードを抱かせてもらった時から、メルディナは何かと理由をつけて私にクロードの面倒を見させようとするのです。
「ふぇ、ふぇ~」
とても小さな泣き声。
女官に抱かれていたクロードがぐずりだしてしまう。
生後一ヶ月の赤ん坊は泣き声も小さくて、ふにゃふにゃとして愛らしい。
「ほらほら、泣いてしまいましたわ」
「私が泣かせたわけではありません。あなたはもう少し自覚を持った方がいいんじゃないですか?」
「わたくし、カップより重いものは持てませんの」
……冥界で猛獣を担いでいたのは誰ですか。
私は小さくため息をつくと、クロードに笑いかけて両手を差しだします。
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