第四章・私の星

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「ブレイラ様、あと少しで回廊を抜けます! ここを抜ければ転移魔法が使えるようになりますので、あと少しご辛抱ください!」 「ありがとうございます! 私は大丈夫ですから皆も無事でいてください!」 「はっ、勿体ない御言葉です! 必ずお守りしますので!!」  コレットはそう言うと、横から襲い掛かってきた怪物を華麗な体術で撃退します。  でもあと少しで回廊を抜けるという時、巨大な怪物たちが壁のように立ち塞がりました。  気が付けば四方を囲まれていてコレットが闘気を高めて警戒します。  明らかにコレットや女官たちの様子が変わりました。 「ブレイラ様、決して私から離れないでください。この怪物ども、おそらく元は魔族か精霊族でしょう。今までの怪物とは魔力が違いますっ……」 「そんなっ……」  人間だけでなく魔族や精霊族までいたなんて。  今回の異常事態は明らかに計画されたものだったのでしょう。 「ブレイラ……」  手を繋いでいるゼロスが不安そうに見上げてきました。  ぎゅっと手を握りしめて大丈夫と安心させます。  でも背後で大きな爆発がして咄嗟にしゃがんでゼロスを抱きしめました。戦闘が始まったのです。 「っ! ゼロス、大丈夫ですか?」 「うぅ、ブレイラ……」  ゼロスもぎゅっとしがみついてきます。  ここにはコレットとエミリアがいてくれますが、女官や侍女たちが劣勢になりだしました。怪物の数が多すぎるのです。  なかには怪物の力に圧倒されている侍女もいて、コレットやエミリアが助けに向かいました。  私の側には常に護衛がいてくれますが気が付けば乱戦状態になっています。  私は邪魔にならないようにゼロスを守るように身構えていることしかできません。  私はゼロスと目線を合わせて顔を覗き込み、小さな両手を握りしめます。 「ゼロス、怪我はありませんね?」 「うん……」 「良かった。大丈夫ですから私から離れてはいけませんよ?」 「うん……」  ゼロスは怯えながらも小さく頷いてくれました。  小さな唇を噛みしめて、泣いてしまわないように我慢しているよう。  少しでも慰めようとゼロスを抱きしめようとした時でした。 「王妃様!!」  突如、エミリアの悲鳴にも似た声。  乱戦に紛れて怪物が背後に接近していたのです。怪物が腕を振り上げて私に襲い掛かる。  すぐにコレットとエミリアが来てくれますが間に合いません。  ゼロスの顔も恐怖に強張って、怪物を凝視する瞳が大きく見開いて。 「ゼロスっ!」  せめてゼロスだけでも守ろうと覆い被さろうとした、その刹那。 「う、うぅっ、うわああああああん!! ブレイラ、ブレイラ~!!!!」  ――――ピカッ!!!!  ゼロスが限界を超えて泣き叫んだ瞬間、体から蒼い光が放たれました。  視界を塗り潰すほどの強烈な蒼い光。  その光にコレットが真っ先に反応します。 「っ、いけない! エミリア、ブレイラ様に防壁魔法を早く!! 最大魔力を出せ!!」 「はいっ!!」  コレットとエミリアが同時に最大魔力を発動しました。  ゼロスから放出された光の衝撃波。 「うぅっ……!」  強力な防壁魔法が張られたというのに、それでも吹き飛ばされそうな衝撃波に襲われます。視界が光に塗り潰されて、音すらも光に吸収されていくようでした。  そして光の衝撃波が過ぎ去って、ゆっくりと目を開ける。
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