第四章・私の星

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「そうです。あなたはとても大きな力を持っています。さっきはコレット達が守ってくれたけれど、また同じことをするつもりですか?」 「うっ……」  ゼロスの大きな瞳がみるみる潤んでいく。  私はそっと手を伸ばし、ゼロスの顔を覗き込んで頬をひと撫でしてあげました。 「責めている訳ではありません。あなたはまだ子どもなので守ってあげたいのです。分かってくださいね?」  慰めるように伝えるとゼロスをアベルに任せました。  ゼロスは俯いてしまっていて、よくお顔が見えません。  でも今はイスラです。胸が騒いで無性に急かされるのです。 「行きましょう、エルマリス」 「はい、こちらです!」  ゼロスを一人にするのは気がかりですが、今はイスラを探すために駆け出しました。 ◆◆◆◆◆◆  城の大広間は惨状が広がっていた。  天井や壁は崩落し、多くの怪物と兵士が戦闘を繰り広げている。  怒号と悲鳴が響く中、イスラは怪物を倒しながらジークヘルムを探した。  しかし大広間にジークヘルムとアンネリーナの姿はない。 「殺せ!!」 「今だっ、とどめを刺せ!!」  イスラの耳に兵士の怒号が飛び込んできた。  振り返ると、三人の兵士が怪物を囲んで追い詰めている。  だがその怪物は人間の姿に戻りつつある状態だった。おそらく薬の効果が薄くなったのだろう。  しかし殺気立った兵士は気付かずに怪物を殺そうとしている。 「待て! 殺すな!!」  イスラは咄嗟に声を上げていた。  鋭い制止に兵士たちは怒りを顕わにする。 「なんだとこのガキ!」 「こんな所になにしに来やがったッ」  兵士たちはイスラに剣の切っ先を向けた。  だがイスラが動揺することはなくスッと目を据わらせる。そして纏うのは場を制圧する圧倒的な闘気。 「俺は殺すなと言っている」  イスラが淡々とした声で言い放った。  しかし声は静謐ながら纏う闘気は格の違いを見せつけるもの。 「な、なに者だ、このガキはっ……」 「っ、ガキじゃないっ。こ、この方は、勇者様だ……! 以前お見掛けしたことがあるっ、あの時の御方だ……!」 「なんだと?!」  一人の兵士がイスラの外見で勇者だと気が付いた。  すると今まで声を荒げていた兵士たちが我先にと跪く。 「も、申し訳ありませんでしたっ!」 「大変なご無礼をお許しください!!」 「どうぞ、どうぞお許しを!!」 「もういい、立て。戦場で膝をつくな」  必死の謝罪にイスラも闘気を収めた。  兵士たちは深々と感謝すると、立ち上がってイスラに現状の報告をする。  式典中に出現した怪物はジークヘルムの命令で動き、参列者たちを襲撃した。そして。 『人間界を一つに』  ジークヘルムはそれを狂ったように訴えたのだという。  意味が分からなかったがイスラはそれに引っ掛かりを覚えた。  だが今はジークヘルムを追うのが最優先である。
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