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「そうです。あなたはとても大きな力を持っています。さっきはコレット達が守ってくれたけれど、また同じことをするつもりですか?」
「うっ……」
ゼロスの大きな瞳がみるみる潤んでいく。
私はそっと手を伸ばし、ゼロスの顔を覗き込んで頬をひと撫でしてあげました。
「責めている訳ではありません。あなたはまだ子どもなので守ってあげたいのです。分かってくださいね?」
慰めるように伝えるとゼロスをアベルに任せました。
ゼロスは俯いてしまっていて、よくお顔が見えません。
でも今はイスラです。胸が騒いで無性に急かされるのです。
「行きましょう、エルマリス」
「はい、こちらです!」
ゼロスを一人にするのは気がかりですが、今はイスラを探すために駆け出しました。
◆◆◆◆◆◆
城の大広間は惨状が広がっていた。
天井や壁は崩落し、多くの怪物と兵士が戦闘を繰り広げている。
怒号と悲鳴が響く中、イスラは怪物を倒しながらジークヘルムを探した。
しかし大広間にジークヘルムとアンネリーナの姿はない。
「殺せ!!」
「今だっ、とどめを刺せ!!」
イスラの耳に兵士の怒号が飛び込んできた。
振り返ると、三人の兵士が怪物を囲んで追い詰めている。
だがその怪物は人間の姿に戻りつつある状態だった。おそらく薬の効果が薄くなったのだろう。
しかし殺気立った兵士は気付かずに怪物を殺そうとしている。
「待て! 殺すな!!」
イスラは咄嗟に声を上げていた。
鋭い制止に兵士たちは怒りを顕わにする。
「なんだとこのガキ!」
「こんな所になにしに来やがったッ」
兵士たちはイスラに剣の切っ先を向けた。
だがイスラが動揺することはなくスッと目を据わらせる。そして纏うのは場を制圧する圧倒的な闘気。
「俺は殺すなと言っている」
イスラが淡々とした声で言い放った。
しかし声は静謐ながら纏う闘気は格の違いを見せつけるもの。
「な、なに者だ、このガキはっ……」
「っ、ガキじゃないっ。こ、この方は、勇者様だ……! 以前お見掛けしたことがあるっ、あの時の御方だ……!」
「なんだと?!」
一人の兵士がイスラの外見で勇者だと気が付いた。
すると今まで声を荒げていた兵士たちが我先にと跪く。
「も、申し訳ありませんでしたっ!」
「大変なご無礼をお許しください!!」
「どうぞ、どうぞお許しを!!」
「もういい、立て。戦場で膝をつくな」
必死の謝罪にイスラも闘気を収めた。
兵士たちは深々と感謝すると、立ち上がってイスラに現状の報告をする。
式典中に出現した怪物はジークヘルムの命令で動き、参列者たちを襲撃した。そして。
『人間界を一つに』
ジークヘルムはそれを狂ったように訴えたのだという。
意味が分からなかったがイスラはそれに引っ掛かりを覚えた。
だが今はジークヘルムを追うのが最優先である。
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