第一章・次代の王

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「ハウスト……」  名を呼ぶとハウストが額に口付けてくれます。  ゆっくりと後孔からハウストのものが抜かれていくも、敏感になった体はその動きにすら反応してしまう。 「あ、……ん」 「もう一回するか?」  からかうように言われて頬が熱くなる。でもハウストをじろりと睨みました。 「…………また言ってみただけですよね? 明日は大事な会議の日ですよ」  明日の四大公爵会議は魔界で開かれる会議の中で最も権威のある大切な会議です。  明日の会議の為にどれほどの方々が準備をしてくれていたことか。  ハウストと目が合って数秒、彼が誤魔化すように咳払いする。 「…………ああ、言ってみただけだ」 「ですよね、良かったです。これ以上されたら明日に響いてしまいます」  私はほっと安心して抱きしめるハウストに擦り寄りました。  抱かれた後にこうしてくっついている時間が大好きです。  余韻を引きずる体は互いに体温が高くて心地良い。  彼の両腕が私を抱きしめて、髪に鼻先を埋めるくすぐったい感触。 「ブレイラ」 「なんでしょうか」 「冗談でも飲むなよ?」 「なにがです?」 「媚薬だ。お前にはきっと効きすぎる」 「の、飲みませんよ!」  ぎょっとして言い返しました。  せっかく心地良い余韻に浸っていたのに、この魔王はっ。 「それならいい。怒るなよ、心配してるだけだ」  そう言ってハウストが宥めるように私の頬に口付けると、抱きしめていた私の体をそっと離しました。  そしてハウストがベッドから降りていく。  突然のそれに私は首を傾げました。てっきりこのまま眠るのだと思っていたのです。 「ハウスト、どこへ行くんですか?」 「所用だ、すぐに戻る。お前は湯浴みでもしておくといい」  ハウストは苦笑して言うと寝所を後にしました。  寝所に一人残されて少しだけ寂しい気持ちになる。  彼は所用だと言っていましたが、もしかしたら急ぎの政務があったのでしょうか。  でもすぐに戻ってくるというのなら、その間に私も自分の体を清めておきたい。  私は寝所から直接行ける浴場で湯浴みを済ませ、また寝所のベッドに戻りました。  少ししてハウストも寝所に戻って来てくれます。 「待たせたな」 「いいえ、それより何しに行ってたんですか?」  政務なら仕方ありませんが、ハウストがこういう時に途中でどこかへ行ってしまうことは珍しいのです。  彼が私を抱く夜はずっと側にいて抱きしめていてくれるのですから。 「大したことじゃない。それより寝るぞ」 「はい……」  ハウストは答えないままベッドにあがると私を抱きしめてそのまま眠る体勢に入ります。  私も彼の厚い胸板に擦り寄りましたが、彼から感じたのは水浴び後のようなさっぱりとした清涼感。先ほどまで余韻を引きずった体は温かったのに今はひんやりとしている。
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