第五章・星屑を抱いて

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「ブレイラ、あにうえ、しらないひとがきたの!」  ゼロスが血相を変えて駆けこんできました。  そんなゼロスの背後に見知った人物が。 「冥王様に案内していただけるとは光栄の極み」 「わあっ! ついてきた!」  ゼロスはお化けを見たような顔で飛び上がると、ぴゅーっと私の所へ駆け寄ってきました。  私の足にしがみ付いて警戒心丸出しで来訪者を見ています。でも知らない人ではありませんよ、あなたが赤ちゃんの頃に何度もお世話になった方です。 「ジェノキス、お久しぶりですね」  そう、ジェノキスでした。  ジェノキスは私を見て優しく目を細めると、側に来て跪く。手を差しだされ、それにそっと手を乗せると手の甲に唇を寄せられました。  ジェノキスは精霊界最強の武闘派ながら、ふとした時に見せる振る舞いはとても優雅です。それはいつも飄々としている彼が精霊界の大貴族の跡取りだということを思い出させるものでした。 「勇者と冥王の御母上様におかれましてはご機嫌麗しく」 「あなたもお元気そうで何よりです」  そう話しかけると、ジェノキスがニヤリと笑って立ち上がりました。  整った顔立ちは精悍さと鋭さが増して隙のない大人の雰囲気を漂わせています。ハウストもそうですがジェノキスも、年月を経るほどに年輪を重ねた巨木のような重厚さを漂わせます。とても魅力的で素敵ですね。 「久しぶりだな、やっと会えた。使者として魔界に来てもブレイラは外遊政務で会えないことが多いからな。……絶対、魔王様が会わせないようにスケジュール組んでるんだぜ?」  故意的だ計画的だと文句を言うジェノキスに苦笑してしまいます。  さすがにそんな事はないと思うのですが、たしかにジェノキスが使者として魔界の王都に来る時に限って私が王都の外へ出ていることが多いような……。そのせいで、いつも私に同行しているゼロスはジェノキスを初対面だと思っているくらいで……。……今まで意識しませんでしたが、たしかに高い頻度のような気がしてきました。  しかしここで認めるわけにはいかず、今は誤魔化しておきましょう。 「そ、そんな事はないと思いますが」 「ほんとにそう思ってるか?」 「…………思っていますよ。あなたは忙しい人ですから」  目を逸らして答えた私にジェノキスが平たい目をしました。  けれど次には軽く笑って誤魔化されてくれます。 「まあいい。魔王様の傍若無人さと、精霊王様の人使いの荒さは間違いないからな」 「人使いが荒いとは聞き捨てならないぞ。まだ足りないくらいだというのに」  ふと割って入った朗々とした声。  姿を見せたのは精霊王フェルベオでした。  思わぬ人物の登場にとても驚きます。精霊王まで魔界を訪れていたとは思いませんでした。  フェルベオと一緒にハウストも部屋に入ってきて教えてくれます。
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