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楽しかった旅行も終わり、今日のお昼にここを出て、色々寄り道をして帰る事になっている。
マナトくん以外の男子達は、『お試し終了!貴方とはお付き合いしません!』と言われるのを怖がっているのか、さっきからソワソワしていて、とてもよそよそしい感じがする。
中でも、碧ちゃんは今にも泣き出してしまいそうなくらい元気がなくて心配になってしまう。
実は、旅行から帰って各々連絡し、別日に遊びに行って気持ちを伝えようと話し合っていた。
ただ、颯太くんも、キヨくんも元気がないし、碧ちゃんの様子は見ていて居た堪れない。
見るに見兼ねた理沙が予定を変更しようと、つい先ほどメグと萌に持ち掛けた。
「ねぇ、少しだけ散歩してきてもいい?そんなに時間は取らないから」
「あぁうん。大丈夫だよね?マナトくん」
「うん。今日は帰るだけだから平気だよ?」
「そう?ありがとう。碧、ちょっと一緒に散歩しましょう?
ねぇ…ほら。早く」
「…ぃやだ」
碧ちゃんは目を真っ赤にしていて、もう数度瞬きをすれば涙がこぼれ落ちそう。
「ん?」
「リサとお別れするのヤダ…。僕とは…付き合わないって…言うんでしょ…?…聞きたくない…行きたくない…死んじゃう…」
理沙が碧ちゃんに歩み寄る。
「ふふ。バカね…いいから行くわよ」
手を取って歩き出そうとすると、碧ちゃんは駄々をこねるように床に座り込んでしまった。
「ヤダヤダヤダヤダ!ぼ、僕はリサじゃなきゃヤダ!…っ…ここが…痛くて…ずっと苦しくて…。
リサが居ない未来を考えると、息が出来なくて…うぅっ…。生きてるのが嫌になる…」
「もぅ…んっとに…」
理沙は碧ちゃんの前にしゃがみ込んだ。
「ね、碧?私を見て?」
「…っ…うぅ…っ…やだ…」
「もう…。話聞いてよー。なんで皆んなの前で言わなきゃなのよ…。ホントに…」
理沙は両手を碧ちゃんの頬に当てて、目を合わさせる。
「碧?私も碧の事、凄く好きになっちゃったの。これからも私とずっと一緒に居てくれる?」
「……………へ?」
碧ちゃんは、ぽかんとして理沙の言葉を一生懸命理解しようとしているようだった。
うろうろと目を彷徨わせて、目から大粒の涙を溢したと思ったら、ビックリするくらいの速度で理沙に飛び付いた。
はい、そーです。理沙の答えを知っていた私とマナトくんは、これからどう言う状況になるか考え、後頭部と背中強打に備えて理沙の後ろに円形の大判クッションを、メグと萌は大きなクッションを3個程マッハで設置したので、事故は回避されました。
碧ちゃんには後先考えて行動して欲しい。理沙が怪我をしたらどうするんだ!
「リサぁ!リサぁ!ホント!?ホントにホント!?やっぱやめ。とかナシだよ!?リサぁ〜!」
無事、大型犬に押し倒された飼い主の図が再び完成したのだった。
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