山南敬助目線

2/8
前へ
/17ページ
次へ
ーーここは大津のとある宿。 今日は如月の二十二日。 私は土方君と意見の食い違いから組を 脱した。 手招きをしながら少し此方へ、と沖田君を 呼ぶ。 「…はい」 「明日、屯所へ帰ろう」 覚悟は出来ている。 ーー局ヲ脱スルヲ不許 という掟を、私は破ったのだから。 「駄目ですよ、絶対に。逃げましょう」 沈黙の後、沖田君が続ける。 「僕はどうなっても良いんです。でも、 山南さんには死んで欲しくないんです、 だから、…っ」 「良いんだ、帰ろう。今…刀を振るえない 私には『死』しか無いんだよ。 …もう、何も見えないんだ。 生きることが怖い。」 「……わかり、まし…た」 「有難う…」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加