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ーーここは大津のとある宿。
今日は如月の二十二日。
私は土方君と意見の食い違いから組を
脱した。
手招きをしながら少し此方へ、と沖田君を
呼ぶ。
「…はい」
「明日、屯所へ帰ろう」
覚悟は出来ている。
ーー局ヲ脱スルヲ不許
という掟を、私は破ったのだから。
「駄目ですよ、絶対に。逃げましょう」
沈黙の後、沖田君が続ける。
「僕はどうなっても良いんです。でも、
山南さんには死んで欲しくないんです、
だから、…っ」
「良いんだ、帰ろう。今…刀を振るえない
私には『死』しか無いんだよ。
…もう、何も見えないんだ。
生きることが怖い。」
「……わかり、まし…た」
「有難う…」
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