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「葵さんが高校生のとき、まだうちに住んでたでしょ」
「そうだね、保育園にお迎えとかも行ったっけ。懐かしいね」
「あのとき、俺、偶然見ちゃったんだ」
「なにを?」
「奧の、葵さんの部屋で、女の子とエッチしてるとこ」
もちろん誰にも話していないし、ずっと胸にしまっておくつもりだったことを今敢えて明かしたのは、葵の反応を見たかったのと、自分の気持ちがどうしても葵の心に刺さらないことに焦れていたためだった。
また、この体勢だと、相手の体温を感じたまま顔を見ずに居られるため、それだけに話しやすかったこともある。
だが葵の方は、突然突きつけられた思いも寄らない暴露話に、心臓が止まりそうになっていた。
「……うそ。まじで」
「初めて見たのは偶然だったんだけど、その後も曜日が同じだったり、こっそり部屋に入ってきたりするからなんとなく分かるようになって……」
うわあ、と声にならない声を上げて、葵は黙ってしまった。
「二人とも制服を着たままで、ベッドにもたれて座ってる葵さんの上に女の子がまたがって乗って、スカートが揺れるたびに子猫が鳴いてるみたいな声を上げてた。葵さんが時々、シーッて声を落とすように囁いたり、キスで口を塞いだりするのがかっこよかったんだ」
当時のことを思い出しながら、春斗は一旦言葉を切った。
あの光景がいつまでも自分の胸の中にある。見てはいけない秘密の事だと思うから余計に見たくなった。今も思い出すと、胸が高鳴ってくる。
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