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 背中をやさしく撫でられて嬉しかったけれど、耳に飛び込んで来たその形容に春斗は目を吊り上げた。 「馬鹿にしてる?」 「まさか。してないよ」  葵の手は春斗の髪を撫で、頬を撫でた。 「ただ、かわいいって思っただけだよ」  言葉を紡ぐのに、目の前で葵の唇と舌が動いた。これを自分の唇で塞いでもいいなんて、そんな日が来るとは思っていなかった。  唇をただ押し当てるだけでなく、試しにちゅっと音を立てて啄んでみた。何度か繰り返し、やっぱりもっと唇の感触を味わいたいと思った。  葵の唇はやわらかくて、触れるたびに泣きたくなった。 「ハルはかわいいな」  少し顔を離すと、葵は穏やかな笑みを浮かべていて、覗いていると溺れそうになるほどその瞳は透き通っていた。 「バードキスだけで、こんなになっちゃうんだ」  隠しようもない自分の熱い昂ぶりはさっきから葵の腹に当たっていて、それを揶揄するように葵の手は春斗の腰から尻を撫で回した。そうされると、意識してますます身体の中心に熱が兆してくる。 「素直だなあ」  葵の表情は高潔なのに、口では案外あけすけな表現をする。こういう場面でも変わらないのかと、春斗は羞恥に戸惑い、一瞬のその隙を突かれ体勢が入れ替わった。  それまで覆い被さっていた自分が気が付けば組み敷かれ、部屋の天井を見つめていた。  事態を把握できないうちに、少し厚めの唇が近付いてきて、キスされると思い慌てて目を閉じた。が、いつまで待っても何もされなくて、おそるおそる目を開けると、自分を見下ろす静かな瞳に出会った。 「俺とセックスしたいの?」  この期に及んでまだそんなことを聞いてくるのかと思ったが、春斗は正直に頷いた。
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