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 夢うつつの中で聞こえているのはシャワーの音だと思っていた。  喉の渇きに耐えかねて眠い目をこすれば、部屋の電気は消えていて、隣のベッドには葵が眠っていた。  空調の効いた涼しい部屋で、春斗はだるい身体を捩って、ベッド脇のテーブルに置いてあったミネラルウォーターのペットボトルに手を伸ばす。寝る前に葵が置いてくれたのか、ペットボトルの表面に結露していた水滴がぽたりと落ちた。  水を飲む、ごくり、という自分の喉が鳴る音が部屋に響く。窓の外は暗く、まだ夜明けまで遠いようだった。  その頃になってようやく、シャワーではなく雨の音だと気が付いた。  一旦上がったはずの雨が、また降り出しているらしい。  春斗は行儀悪く横になったままで水を飲み、隣のベッドに目をやった。  葵は上半身裸のままでしどけなく横たわっている。壁側を向いて眠っているため、春斗の方からは寝顔を見ることができなかった。  薄い掛け布団からはみだしている、適度に筋肉の張った肩や腕を眺めながら、本当にこの人とセックスしたのかな、とぼんやりと考えた。ほんの数時間前のことなのに現実感が希薄で、ずっと前の記憶のような気もするし、いつもの妄想のような気もした。 ――出していいよ。  唐突に、葵の掠れた声と色悪な表情が脳裏に蘇る。 ――俺も一緒にいい?  熱に浮かされたような声音を思い出すうちに、身体が熱くなっていく。触るまでもなく、自分の股間が張り詰めて硬くなり始めたのが分かり、春斗は欲深い半身が怖くなった。  これ以上ないくらい気持ちよく遂情したばかりなのに、これでは発情した動物と同じだし、葵にも失礼だ。自分はどうしてしまったのだろう。  ひどい罪悪感を抱えながら春斗は起き上がり、Tシャツ以外何も身に着けていないことに気が付いた。思い返せば、そもそもそれを羽織った覚えもない。葵が着せてくれたのだろうか。
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