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「別に。スマホで会話してるじゃん。性格なんて知ってるでしょう」 「直接会うのとSNSとはやっぱり違うよ」  中学生になってから、親に限らず誰かと話すことが鬱陶しくて口数がめっきり減った自覚はあった。でも葵とだけは、時々メッセージアプリで会話をしていた。  普段思っていることを投げて、返ってくる言葉にまた投げて、短いやり取りだったり長文になったり、話すのではなく入力だからかも知れないけれど、相手が葵だと素直になれた。 「ハルは文字の方が饒舌だね」 「葵さんは反対なんだね」 「ああ、少しは黙れって兄貴によく言われる。肝心なことは話さないくせに、っていうお小言付き」  そう言ってくすくす笑うのを見ていると堪らない気持ちになった。葵の返事は短文が多く、春斗とのやりとりも最後はいつも葵の既読スルーで終わる。たまりかね、何度か意を決して電話をしたことがあったが、つながった例しがなかった。 「ハルが前に言ってた好きな人とはどうなったの?」  アイスを一心に食べ、冷えて頭と喉に激痛が走っているところに直球のデッドボールを食らう。 「ノーコメント」  そんなこと、送っただろうか。 「同じ学校の子?」 「ノーコメント」 「ちょっとくらい教えてよ」  送った記憶が無いから他の誰かと間違えているのか。それとも鎌を掛けられているのか。 「それなら葵さんは付き合ってる彼女いるの?」  いるよ、と言われたらショックなくせに聞いてしまった。甥の恋愛事情なんて範疇外だから気軽に話題にするのだと、半分くらい自棄だった。
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