蠱惑Ⅱ『俗塵』

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「君んちに飾ったらどう」  私は女の家に行くチャンスを窺いました。この絵を出汁に肉体関係を結ぶことを思いつきました。リストランテで血のように赤いワインを飲み、血が滴る生肉を喰らいタクシーを呼びました。彼女は2DKのそれも天井が低いマンションに暮らしていました。 「だから言ったでしょ、この絵はあたしの家には合わないって」  狭い2DKの間取りいっぱいに雑貨が散らかっていました。私はゲンナリしました。お洒落で、きれい好きな女だとばかり考えていました。 「掃除はしないの?」  私の言葉にむっとしました。 「あたしの勝手でしょ」 「だからその年まで男がいないんだよ」  女は私の頬を張りました。私は張り返しました。女は掴み掛ってきました。私は散らばる雑貨の上に投げ捨てました。そして女の衣服を剥ぎ取りました。私の至る所を拳で叩いていましたが、私が股間に顔を埋めると拳は平手になり私の頭を強く押し付けるのでした。私は二度果てました。女は三度果てました。 「絵は上げるよ」  私はそのまま女のマンションを出て行きました。その付き合いがきっかけで結婚に不安を感じるようになったんです。付き合っている時の外面、それを理想と勘違いすると失敗に繋がります。  20代で結婚した私の友人に外面に勘違いして僅か2年で離婚した男がいます。 「お前の生き方が正解だったな」 「そんなことはないさ、君はモテるからそんな風に考えるんだよ」  その友人は離婚後三年目に再婚し、また二年で離婚しました。女関係が離婚の原因だと言っていますが、それは違うと思います。 「いや、正解だよ、女房なんてさ、子供が出来りゃ収入はゼロになる。だけど給料は倍にならないからな。子供が大きくなりゃ三倍の負担が掛かる。サラリーマンは独身貴族がいいんだよ。羨ましいよ」  友人は酔って愚痴を溢しています。私は誇らしくもありました。性のはけ口は月に一度のソープランド、そして自慰で満足出来るようになりました。もう独りでの生活に何の問題もありません。女なんか煩わしいと思うようになりました。  
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