蠱惑Ⅱ『俗塵』

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「そんなに重いのかね私の腰と膝は?」 「膝は変形性膝関節症と言って多くの方が発症しています。これは痛み止めやリハビリでほぼほぼ正常にまで回復することが出来ます。でも腰は再検査になっています。ヘルニアなら再検査することはありません。もしかしたら脊髄に何か原因があるかもしれませんよ」  患者にとってこれほど不安になる答えはない。それも笑顔で語り掛けられているから尚更腹が立ちます。そして不安は的中しました。検査は若い看護師の女が言った通りの結果になりました。手術すれば治るだろうが、手術のリスクもある。 「失敗すればどうなるんですか?」 「そんな心配はいりませんよ、手術しなければ痛みで歩けなくなりますよ。普通の痛み止めじゃ効果なし」  この痛みは我慢出来ない。薬の量が増えるだけでそのうち効かなくなることは医者じゃなくても想像が付く。 「安心してお任せして大丈夫ですね?」   私の念押しに頷いた医師に不安を感じました。太鼓判を押してくれたが同意書にサインさせられました。同意書は言葉巧みであるが最悪死もあると書いてあるのです。問題は執刀医である。手術前日に不摂生はしないだろうか。夫婦喧嘩をして機嫌が悪くないだろうか。そんなことまで気になってしまいます。 「おい」  私を呼び止めたのは結婚離婚を繰り返している友人でした。病院の廊下を車椅子で擦れ違うときに友人が私に気付いて声を掛けたのです。 「ああ、君か。こんなとこでどうしたんだい?」 「それはこっちの科白です」  お互いに笑い合いました。 「ああ、紹介しておく、うちの家内」  背の高い美人の奥さんでした。私の記憶では四度目の再婚だと思います。私は夫人に挨拶しました。
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