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 夜のファミレスで北村陽一は親友を待っている。  45年の人生の中で最大の告白をするためだ。  陽一は今、心から笑う事も食べ物を味わう事も無防備な子猫の寝顔を見てかわいいと感じる事もなくなってしまっている。  もはや自分の中だけで抱え込めなくなったこの禁断の想いを吐露しなければ狂ってしまう。  それがただのエゴである事も承知の上でそう判断し、親友に告白すると決意した時はフルマラソンをうさぎ跳びで終えたような疲労感があった。  ただ、その告白を受け入れてもらえる可能性は限りなくゼロに近い。  人並みに恋愛はしてきた陽一だったが、成就の可能性が極めて低いと分かっている恋心がこんなにも苦しいとは知らなかった。  よく『胸が張り裂けそう』なんて表現を耳にするが、今の陽一はそんなもんではなかった。  胸がF1カーにロープで繋がれてずっとS字で引きずられてるような辛さだ。  この告白がもたらすであろう関係の崩壊を想像して、緊張と不安で陽一の口臭はなかなかになってきた。  それを自覚した陽一がマウスケアスプレーを吹きかけた直後、親友の南田政之が店に入ってきた。  陽一は深呼吸を一つしてから、自分を探す政之に手を挙げた。  気づいた政之が小さく手を挙げ返し、陽一の向かいに座った。
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