2.白銀の剣士

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2.白銀の剣士

「おぅらぁぁ!!!」  男子生徒はアシルに向けて剣を振るう。  頭上に振り上げ、上段の構えから真っ直ぐに繰り出される、力強い一撃。  その攻撃が弾かれたらすかさずに右上から振り下ろす袈裟(けさ)斬り。  さらに胴体を狙った横一文字(よこいちもんじ)と、攻撃の手が止むことはない。 「………っ!!」  アシルは連続攻撃に対して防御の姿勢を続けているが、勢いに押されて少しずつ後ろに足を引いていく。 「おらぁおらぁおらぁぁぁぁぁ!!!」  相手が後退していくことを感じると、さらに勢いは増して、右下から左上にかけての逆袈裟斬りを繰り出してアシルの状態を崩そうとする。 「こんなもんかぁ?大したことないなぁ、所詮は見習いだな!!」 「…………ぐっ!!!崩される………」  逆袈裟斬りによってアシルの剣は弾かれ、敵はすかさずに上段の構えをする。  重心が後ろに流れたアシルは、咄嗟に右足を後ろへ着いて安定させると、振り下ろされる刃を防御する。 「…………くっっっっそぉ!!!!」  アシルは全身の力を使って敵の剣を弾く。 「なっ……に!?!?」  アシルのことを甘く見ていたため、敵はバランスを崩す。 「ここだっ!!!」  アシルは間髪入れずに脇腹(わきばら)を狙った横一線の一撃を繰り出そうとする。  しかし………、 「ぐっ……ぁ!?」  一撃を繰り出した瞬間に、強烈な頭痛に襲われて視界も歪む。  剣は相手に届くことなく勢いを失い、アシルは頭を抑える。 「おらぁぁぁぁ!」  相手はそれを逃すはずなく、アシルの腹部に横一文字を叩き込む。 「ぐっ!?………はぁっ!」  10メートルほど後方へと飛ばされたアシル。  お互いに使っているのは刃のない入学の際に貰った練習用の鉄剣だが、鉄であるため一撃を食らえばかなり痛いだろう。  「…………がっ……はっ!!!」  壁にぶつかり、倒れ込むアシル。  その様子に反撃はないだろうと見た敵は、ゆっくりと剣を構えて近づいてくる。 「危なかったぜ。これで終わりだ」  切れることはないものの、鉄剣は先端が鋭い。  突きをすれば、本物と同様に刺さるだろう。  敵は頭の中で描く、上段の構えから一撃、そして止めに突きで胸を貫いて終わりだと―――。 「あばよぉぉぉ!!!」  剣が振り下ろされた、その時――――。  ガキンッ!!!!  鉄同士が強くぶつかり合う音が聞こえる。  相手の一撃は、まるで岩に向けて放ったかのように強い衝撃とともに弾かれてしまった。 「なに!?!?……貴様………うご……けて」  壁にぶつかったことによる反動で動けず、負けを確信したアシルの目の前に、人影が現れる。  腰に届くほどの長く青白い髪が、目の前で優雅に舞っていた。 「助けてくれたまでは良かったけど…………」  敵は弾かれた状態から、もう一度振り下ろす。  しかし、咄嗟に繰り出した攻撃に先程のような勢いは無く、人影はそれに合わせて剣を握る両手に一撃を入れる。  剣は手を離れて、敵の後方へと飛ばされる。  攻撃の勢いのまま、敵の目の前で1回転して横一文字の攻撃を食らわせる。  敵はアシルのように後方へ飛んでいき、転がった後に意識を失った。 「剣の腕は全然ね。あなた」 壁に寄りかかって座っているアシルの方に振り返ると、そんな言葉を投げかける。
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