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「やっぱり、大切な友だちなんでしょ? 騙したりしないで、彼女はいないって、本当のこと言った方がいいんじゃない?」
「いや、今さらアイツに嘘だなんて言えないよ。だから、頼んだ」
「うん、わかった」
昇降口までくると、永井くんはさりげなく私の手を掴んだ。たった5分だけの彼女。わかってはいても、繋がれた手を通して、この気持ちが伝わってしまうんじゃないかと、ドキドキしてくる。
ずるいよ。5分だけの彼女なんて、イヤだよ。ずっとこんな風に手を繋いでいたい。
永井くんの顔を見上げると、私を見下ろした永井くんと、ばっちりと目が合ってしまう。
永井くんは、にっこり笑うと、空いていた右手で、私の頭をポンと撫でた。
側から見たら、私たちはちゃんとカップルに見えるんだろうか?
いつもより近い永井くんとの距離に、鼓動はうるさくなっていくばかり。
「よっ!」
「よぉ」
中野くんは、私の目の前に立つと、人懐っこそうな笑顔を浮かべた。
「初めまして、中野です」
「初めまして、佐川です」
「亜由美ちゃんだよね、永井からいつも聞かされてます。亜由美ちゃん、好き好き好きーって」
中野くんは悪戯っぽく笑った。
「お、おい、余計なこと言うなって。そんなこと俺、言ったことないだろ?」
「イヤ、いつも言ってるだろ? 最近のお前は、亜由美ちゃんの話しかしてない」
「そんなわけない。もう、コイツの言うこと、信じなくていいから」
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