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俺たちは王宮へ向かう馬車に揺られている。荷物がほとんど無かった俺の家族はすぐに王都に行くことになり、俺は殿下と同じ馬車に乗った。従者は苦言したが、アルフォード様は俺を馬車に連れ込んだ。
馬車の中であの世界のことを話していた。殿下が担当された天使は書類に満ちた空間にいて、疲れている様子だったらしい。
「あの、殿下も私と同じ事を願ったのですか?」
彼に首を振られて、俺は少なからずショックを受けた。家の前で話していたことと違うではないか。
「私がくたびれた天使と話していると、白い覆面が現れてお前の願いを教えてくれたのだ。『あなたとずっと幸せに生きたいらしいですよ』とな」
天使のサポートは本人に言うことなのか。俺はあの白い空間を思い出した。
「だから私は長生きできるように願ったのだ。お前と末永く生きる為に」
彼は俺の手を取って、甲にキスした。
「すると吸血鬼になっていたのだから驚いたよ」
「そうですね」
今までそんな種族は存在していなかったから慣れるまでが大変だった。あったとしても物語の中だけだった。幼い頃はゴブリンやドワーフを見ては、身構えてしまっていた。
「本当にファンタジーの世界の吸血鬼のように永い命が欲しいという願いが叶うとはな。天使も有能だ」
彼は頷いて満足そうに笑った。
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