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ⅩⅢ
「お兄ちゃん、頼むからイチャイチャは部屋でやって」
菜摘ちゃんが、呆れた顔でホイップクリーム作りながらこちらを見る。
私が仕事から帰ると、必ず店の裏から入る。
そこは厨房だ。すると奏ちゃんは、周りの目を気にすることなく、頬にキスをする。
「手は使えないから抱きしめられない。だから、これなら問題ないだろ」
何か文句でも?といいながら、恥ずかしがる素振りはない。
「お兄ちゃん、人が変わったね。噂は本当だったのか。これは、お母さんみたら卒倒するかもしれない」
「……本当にやめて……」
私が真っ赤になってつぶやくと、菜摘ちゃんが笑いながら答えた。
「緑ちゃん。お兄ちゃんのこと、あんなに長い間相談にのってきたけど、本当に無駄な時間だったね。お兄ちゃんが全部悪いけど、ね」
「ごめんね、菜摘ちゃん。返す言葉もありません」
「いいよーお姉さま。私、嬉しいから」
二階に上がり、夕飯の仕上げにかかる。今日はビーフシチュー。下ごしらえは昼に奏ちゃんがやってくれてる。サラダは下のカフェの賄いと重ならないように作る。
九時が閉店時間。大体、十時には上がってくる。
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