桜色のキャンバス

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川沿いには木々が並び、その緑の葉は太陽の光を浴びて輝いていた。私は木陰で、いつもと同じように桜の絵を描いていた。 あの日、看護師の女性と会って変わったことがある。一つは、私が今までに描いた桜の絵を、病院に飾ってもらうことになったのだ。私が描いた桜の絵を全て病院に提供したい。そう伝えると、彼女は喜んで承諾してくれた。病院の廊下には私の桜の絵がたくさん飾られるようになり、患者さんはもちろん、医師や看護師、お見舞いにくる人までも見てくれるようになった。夏にも関わらず、病院内は春のように桜色に染まっていた。そして、その数は、まだまだ増える予定だ。 二つ目は、私の進路が決まったことだ。私は、医療事務を目指すことにした。絵を描くこと以外に何の興味もない私だったが、今回のことで、病院に携わる仕事をしたいと思ったのだ。今は絵を描くだけでなく、医療事務のための勉強も始めている。 私は今日、十八歳の誕生日を迎えた。ずっと好きになることができなかった桜、今では私の一番好きな花となった。この歳になってようやく、自分の名前に誇りが持てるようになった。
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