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「……え?」
男はゆっくりと店員の顔を見つめる。すると店員が先ほどとは打って変わって滔々と語りだした。
「この地にオープンしてから、はや80年。皆さまに愛され、今日までやってくることができました。今日でここを閉めることになりますが、こうしてお客様に最後の料理を食べていただける。何よりの幸せです! ありがとうございます!」
「……は、はい」
「今、メニューお持ちしますね。当店の歴史にピリオドを打つ、最後の料理。どうぞ、お選びください」
店員は意気揚々とメニューを取りに戻る。
「……きっつ! きついって! ラストオーダーって、そういうこと? 『創業80年』とか言ってたよね?」
男も事の重大さに気付き始めた。
「え……重荷過ぎない!? 俺のチョイスでこの店の最後決まるってこと? 無理無理無理無理! ダメだ、帰ろ」
男は席を立つ。黙って店を去ろうとするも2歩目で立ち止まった。次なる思考が押し寄せる。
「……もし、俺が帰ったら、この店は最後の料理も出せずに閉まっちゃうってこと……? それはそれできつい!」
結局座り直す。
「えらいとこ入ってしまった……!」
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