THE LAST ORDER

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 メニューを持って店員が戻ってきた。 「お待たせしました。さあどうぞ、『ザ・ラストオーダー』をお選びください」 「『ザ・ラストオーダー』!  何か企画っぽくなってる」 「おーい、みんな!」  店員が厨房に呼びかける。3人ほどの男女がぞろぞろと出てきて並び始めた。 「何? え、何これ」 「どうぞどうぞ、遠慮なく! 待ってますから」 「待ってる? え……何ですか、一体?」  とにかく考え続けてはドツボにはまってしまう。すぐに決めてしまおうと思い、メニューをめくる。 「あ、美味そう! このエビフライ定食とか、いいですね」 「お! 出ました、エビフライ定食! それはね奥の彼が考えたんですよ」 「へえ……あ、海鮮スパゲッティもよさそう!」 「あ、それは左の彼女が」 「へえ……あ、マルゲリータピザ」 「右の彼が」 「へえ……」    メニューを閉じ、テーブルに叩きつける。 「そういうことか」 「はい?」 「作る人の前で最後の料理を選ばすなよ! あんた鬼だな!」  とく見ると、店員全員が身体を硬直させてこちらを眺めている。 「ほらめっちゃ緊張してんじゃん!」 「やっぱりね、作る人の顔を見て選んでもらおうと」 「やりづらい、やりづらいって」  男に目もくれず、店員はプレゼンを始める。 「いいですかお客様。こちらの彼は、学生の頃から当店で働き、正社員に登用されました。こちらの彼女は、上京したてで右も左も分からないところに、この店の味に一目ぼれし、バイトを続けてきました。そして彼。先月働き始めてばかりで、やっと今日、厨房に立てました。そして、最初で最後の調理の機会を待っています。さあ、ご注文は」 「重い重い重い! いや店員皆にドラマがありすぎるって。てか、最後の彼かわいそすぎない? 何で今日キッチンに入れたの?」  男はこのドラマだけでお腹いっぱいになり始めていた。 「さあ、お客様。ご注文は?」 「えー?」  男は嫌々メニューをめくる。人に左右されていてはきりがない。自分が美味しそうと思ったものにしようと考えた。  そんな時、一つの品が目に留まる。
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