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医師は煙草を深く吸い、ゆっくりと煙を吐いた。
「たとえ翼を失っても、君たちの種族が人間になれるわけではない。ただ、エデンに守られていた君たちは、楽園を失うことになる」
「それは、どういう意味ですか?」
「本来、君たちの種族に寿命はない。永遠に神に奉仕する命が定められているのだ。だから手術で死ぬこともないわけだが」
「翼を切除すると、永遠の命が失われると?」
煙草が吸えないほど短くなり、婦長は携帯灰皿を出した。
煙草の火が消え、煙がひとすじ漂った。
「病理学的な理由は分からないが、手術をした後にメラノーマができる」
「メラノーマ?」
「黒色腫、極めて悪性の皮膚がんだ。手術をした肩甲骨に対称性に現れる。最初は小さなホクロのようだが、徐々に広がっていく。ちょうどロールシャッハテストのインクのシミか、コウモリの翼のように」
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