4

1/1
前へ
/9ページ
次へ

4

その〇年後、男は病院に電話し、すでにアッバース医師が退職していることを告げられる。 「婦長さん、背中にホクロが・・・」 「そうでしたか。でもまだ〇年ですのに」 「あれから有効な化学療法は?」 「いいえ、まだ・・・」 「諦めるしかないのですね」 「残念ですが」 「では、アッバース先生によろしくお伝えください」 「院長は亡くなられました」 「え?どうして?」 「ご病気で・・・」 「そうでしたか。ヘビースモーカーでしたから、肺がんか何かでしたか?」 「いえ、悪性黒色腫でございました」 男は電話を切り、天を仰いだ。 だが、祈るべき神は、もうどこにもいなかった。 〜終〜
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加