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男がシャワーを終え、髪を乾かしていた女がドライヤーを止めると、夜は急に静かになった。
女は振り返り、体に巻いていたタオルを取ると、男の肩から胸を拭いた。
「後ろを向いて」
男は背を向けた。
「あ・・・」
女は短く声を漏らした。
「醜いだろ?」
男は言った。
「そんなことないわ。手術の痕?」
「ああ」
「怪我?」
「いや」
「病気?」
「先天性の、骨の病気」
「治ったの?」
「まあね。疵は残ったし、腕を上げられないけど」
「疵は服を着れば見えないし、いつか歳を取れば、誰でも腕は上がらなくなるものよ」
「手術の前、医者も同じことを言っていた」
ふたりは笑った。
「あら?ここにホクロがあるのね」女が言った。
「ホクロ?どこに?」
「知らなかったの?ちょうど肩甲骨のところ、こっちと、こっち、ひとつずつ」
女は細い指で、男の背中をちょんちょんと押した。
「左右対称に、まるで何かの印みたい・・・」
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