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落ち葉がカサカサと音を立てて、道路の隅で震えている。もうすぐ冬なのかな。厚い服を着ているけど、結構寒い。
駅まで歩く。駅周辺はカラオケ屋や居酒屋が多い。今は夕方だから、あまりお客さんが入っていないけど。
それでも、この街は好きだ。特に私は人混みが苦手だから、休日の明るい時間帯に来るようにしている。
「ちょっと、お姉さん」
なんだか、背後から声が聞こえた気がした。無視して後ろを振り返らずに歩く。
「お姉さん、無視しないでよ〜」
馴れ馴れしい声だ。無礼な人もいるものだと私は思う。
「お姉さん!」
ふと、肩を叩かれる。ビクッとした後、私は恐る恐る後ろを見る。いかにもチャラそうな男がそこに立っていた。柄の入った白Tシャツにダメージジーンズ、髪は金色に染めているが地毛の黒が出てきてしまっている。ダサいな、なんて感想を抱く。
「あ、やっと俺のこと見てくれた〜。ねぇねぇ、ちょっと俺とお茶してかない? そこにいい感じのカフェあるしさぁ〜」
親指でくっとカフェの看板を指さしている。私の行ったことのない店だ。
いや、そんなことはどうでもいい。これは……ナンパだ。やばい、と脳が危険信号を出している。顔が引きつる。
「そんな怖がらないで。俺はただお姉さんとお茶したいだけなんだよ」
ぱち、とウィンクをされる。別に格好よくない。私の方がずっと、何百倍も可愛いから。
でも、やっぱり怖いなと思う。得体の知れない人などと店に入りたくない。気づけば足が震えている。
逃げなきゃ。
「ちょっと、お姉さん!」
私は走った。とにかく駅に逃げよう。そうすれば駅員さんに助けを求められる。高校で学年一だったこの足で、どうにか逃げてみせる。
「待ってよ」
追いかけられている。怖い怖い怖い。嫌だ嫌だ嫌だ。あんな知らない人と一緒にいたくない。
駅前の飲み屋街を駆け抜け、駅のエスカレーターをダッシュで上がり、改札を過去最高の速さで突っ切る。
やだやだ。怖い。来ないで!
そこに来ている電車に乗る。私が駆け込んだ数秒後にドアが閉まり、発進した。
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