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「ハルカちゃん、ドアプレートをお願いしていい?」
ユイさんを見送ってしばらくした後、アヤさんがわたしに告げた。
「お店、閉めるの?」
「うん。今日はお客様は来ないから」
〝未来視〟の力を持つアヤさんが言うのなら、間違いない。わたしは表のドアプレートを裏返して、〝CLOSED〟にした。
時計を見ると、午後九時半。今日の営業時間は、わずか三時間あまり。
「では、帰るとしますか。ハルカちゃん、準備して」
マナさんに言われて、ロッカーからバッグを取ってくる。それを確認したアヤさんが、入口に鍵をかけて、ランプの明かりを消す。
マナさんの側に立つと、彼女はわたしとアヤさんの肩に手を載せた。
「それじゃ、いくよ。……せーのっ」
掛け声とともに、視界が一瞬だけ真っ暗になる。次の瞬間、わたしたちはアヤさんのアパートの玄関に立っていた。
マナさんの瞬間移動の魔法。何回体験しても、ドキドキしてしまう。
「じゃあ、わたしは帰るね。また、明日」
わたしの頭をくしゃくしゃと撫でて、マナさんはそのまま玄関を出て行く。
「ハルカちゃん、今日もお疲れ様」
「うん。学校より疲れてないよ」
「ふふ、そうかもね」
アヤさんに続いて靴を脱いだその時、わたしの頭の中にぼんやりと映像が浮かんできた。意識同調のビーズが、ユイさんに反応したのだ。
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