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気が付いたとき、わたしはリビングのソファに座っていて、アヤさんがわたしの涙を拭いていた。ユイさんに同調して、溢れ出た感情の影響だ。
「ユイさん、イヤリングを使ったのね?」
「うん。お母さんとお話し出来たみたい」
「よかったね」
アヤさんが優しく微笑む。わたしもユイさんと同じように、打ち明けていないことがある。
「アヤさん、あのね」
「なあに?」
彼女の顔を見て、言葉に詰まる。大事な話をするときは相手の目を見なければ。ユイさんのお母さんが言っていたことを思い出す。わたしが顔を上げると、アヤさんは柔らかい眼差しで迎え入れてくれた。
「わたし、アヤさんに迷惑かけてないかな」
「どうしてそう思うの?」
「夜はほとんどわたしと一緒でしょ? アヤさんの時間を奪ってる気がして」
「わたしはハルカちゃんの側にいたいから、そうしてるだけだよ」
「本当に? お父さんに頼まれてるからでしょ?」
「違うよ。むしろ、わたしの方から一緒にいさせて貰えるようにお願いしてるんだから」
アヤさんは優しく微笑むと、わたしの頭に手を乗せた。
「ハルカちゃんには色んなものを貰っているんだよ」
わたしがアヤさんに何をあげているというのだろう。考えていると、アヤさんはわたしをふわりと抱きしめた。
「お店を任されてから、色々考えたり、不安だったりすることがあるんだよ。でも、こうして、ハルカちゃんが側にいてくれるだけで、安心できるの。わたしが困っているとき、助けてくれるって約束したでしょ?」
不思議と、アヤさんに包まれていると、心が落ち着いていくのを感じた。
「わたしは、人の気持ちを考えられるハルカちゃんが大好きだよ」
「……うん」
わたしは、アヤさんの役に立ちたい。そして、将来は人を助ける魔導師の仕事をやってみたい。あとは、それを父やアヤさんが許してくれるかだ。
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