心の声

3/15
前へ
/199ページ
次へ
「こちらで魔法を扱っていると伺ったのですが」 「はい、取り扱っております。どうぞ、お掛けください」  アヤさんがわたしが座っていた椅子を勧め、女性はゆっくりと腰掛けた。彼女は不安気にお店の中を見回している。 「あの……」  言葉に詰まっている彼女を手で制して、アヤさんはテーブルの上の〝魔法事典〟に手をかざした。  ひとりでに事典のページがめくれていく。女性の方は不思議そうにその様子を見守っている。これは、お客様が来たときの恒例の儀式だ。  しばらくして、魔法事典はとあるページを指し示した。アヤさんはページの内容を確認し、テーブル隅に置いてあるカードにペンを走らせる。  ご注文 No・095 読心の魔法  〈買い取り〉  現金でのお支払い 720万円  時間でのお支払い 300日  〈レンタル〉  買取金額の1パーセント/日 「あなたに必要な魔法はこちらのようです」  彼女はアヤさんが差し出したカードを見て、驚いたようだった。心当たりがあるのだろう。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加