心の声

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「当店で扱っている魔法は、買い取っていただくか、必要な分だけレンタルするかを選んでいただいています。どちらをご希望ですか?」  アヤさんがこのお店を任されてから始めた、魔法のレンタル。魔法は、一生使えるように身に着けることも出来るが、それだと法外な対価を支払うことになる。数回使えれば十分というお客様のために、新たに設けた割引システム。  というのは、表向きの話。そもそも、このお店の魔法の対価は、実際にお客様に支払ってもらうのが目的ではなく、物差しの役割を果たしている。 「レンタルをお願いしたいです」 「かしこまりました。お支払いはどちらになさいますか」 「……時間での支払いというのがよくわからないのですが」 「あなたの人生に定められた時間を代価の代わりとするという事です。寿命、労働、記憶の三つの中から選んでいただきます」  わたしはアヤさんの合図を受けて、棚から契約に必要な書類を取り出した。  時間での支払いに関する説明事項には、こうある。  一、寿命を以て代価に充てる場合、十分な寿命が残っていない時は契約不成立とする。  一、労働を以て代価に充てる場合、自身の生命活動の維持、生理的現象の解消に費やした時間は代価として認められない。  一、記憶を以て代価に充てる場合、いかなる条件下でも、代価とした記憶の復元は認められない。
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