心の声

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「もし寿命を選んだら、本当に寿命が短くなるんですか」 「魔法を行使するということは、それだけの代価が必要ということです。焦らず、ゆっくり考えられて結構ですよ」  彼女はずり落ちそうな眼鏡の位置を直すと、契約書の文面をにらんで、難しい顔をした。 「何日かお借りするとしたら、かなりの金額になりますよね」 「そうですね。この魔法の場合、一日当たり七万二千円必要になります」 「でしたら、時間で支払いたいです。労働でも構いませんか」 「もちろんですよ」  わたしがこのお店で働くようになって、実際に支払いが行われたケースは二例しかない。そのどちらも、労働での支払い。そして、既に完済しているはずなのに、なぜかその姉妹はどちらも働き続けている。  奥のキッチンからティーセットを持ったマナさんがやってくる。他でもない、労働で魔法を身に着けたうちの一人だ。 「お茶をどうぞ」 「ありがとうございます」  マナさんはカップをお客様の前に置くと、彼女の顔を見て首を傾げた。 「失礼ですけど、どこかでお会いしたことはありませんか」 「い、いえ、多分お会いはしていないというか……」  彼女が慌てたように顔を伏せる。マナさんの言葉でわたしも気づいた。彼女の顔には見覚えがある。
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