心の声

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「もしかして、有住ユイ?」 「はい……」  マナさんがその顔を覗き込むと、彼女は少し困ったようにうなずいた。 「わあ、本物だ、すごい! 握手していいですか」  答えを聞く前にマナさんは彼女の手を両手で握りしめた。  名前を聞いて思い出した。彼女は、今人気急上昇中のアイドルグループの一員だ。 「肌とか、めっちゃ綺麗。まつ毛も長いし」 「ちょっと、マナっ。困ってらっしゃるでしょう」 「だって、あのユイユイだよ。……あとでサインもらっていいですか」  アヤさんに注意されて、マナさんが口をとがらせる。わたしは彼女のこういう無邪気なところが好きだったりする。 「わたしのサインなんか貰っても、すぐに落書きになっちゃいますよ」  ユイさんは、苦笑しながら答えた。 「あ、心配しなくても、わたしはネットで売ったりなんかしないですからね」 「そうじゃなくて、アイドルを辞めるかも知れないので」 「え?」 「本当は好きでアイドルをやっているわけじゃないんです。このお店に来たのも、それが理由なんです」  ユイさんは、アイドルになるまでの事を語りだした。  買い物帰りに街中でスカウトされたが、最初から彼女自身は全く乗り気ではなかったのだという。
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