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アヤさんがこのお店を預かるようになって、しばらくしてからのこと。彼女はわたしにこのお店の方針を説明してくれた。
まず、お客様に提示する魔法の代価は、物差し代わりだということ。価格や日数は、お客様が魔法をどれだけ必要としているかを測るための目安の数値なのだ。提示された支払いを断るようなら、魔法に頼る必要がないということになる。
そして、お客様には支払いをさせないこと。
お客様には体験と称して、魔法と同等の効果を持つ魔法具を貸し出し、目的を達成させる。お店の経営がどうやって成り立っているのかは、アヤさんも知らないようだが、これは前任の時から変わらない。
お客様の魔法体験を共有することが、今のわたしの主な役割だ。それが、将来魔導師を目指すためにも役立つ。
でも、きっとアヤさんはわたしが魔導師を目指すことを心配している。口には出さないが、普通の仕事に就いて欲しいと考えているに違いない。
アヤさんはわたしにとっては姉や母親のような存在。たくさんの愛情を注いでもらって、わたしはここにいる。
彼女はわたしをどう思っているのだろう。わたしは無意識に前髪を留めている魔法のヘアピンを触っていた。
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