幕間① -火蓋-

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 祈りが神に聞き届けられ、傘の頭紐(あたまひも)がミミズのように波打つ。次の瞬間、無数に枝分かれした糸が長々と伸び、送り狼を雁字搦(がんじがら)めにした。 「ぐげえっ!?」  霊力を(まと)って太く編み上がった縄が、「怪異」を容赦なく責め立てる。喉を締め付けられて喘ぐ捕虜に、できるだけ柔らかく呼び掛ける。 「これは失礼……貴女にお伺いしたいことがありまして……その銀髪娘とやら……他にどんな特徴がありました?」 (ふ……フンッ! そのようなこと、貴様に話す義理はないわ!) 「余計な抵抗はしないでください……さもなくば……」 「グギャアアアッ!?」  白い泡を吹きながら、「お犬様」が海老反り状態になる。彼女のプライドがへし折れるのは時間の問題だった。 (く……黒い靴を履いていた! 厚底で、毛皮の装飾が施されていて、実に珍妙な一品だった!) 「ほうほう……他には?」 (の、残りの衣服も黒で統一されていた! 眼鏡の縁に至るまでだ。肌は白く、頬がほんのりと赤くて、瞳の色は……その……(くす)んだ金のような……) 「……シャンパンゴールド?」 (え……英国語に詳しくはないが、恐らくそれだ)  ふむ、やはり自分の勘は当たっていたらしい。いずれの情報も監視カメラの映像と一致している。どうやら想像していたよりも早く、のツラを拝めそうだ。 「それでは最後の質問です……銀髪娘は……でしたか?」 (あ……ああ。やけにこましゃくれたヤツだったよ。命の危機に瀕していながら、泣き声一つあげないのだから) 「ふふふ……これで確定ですね……ご協力ありがとうございます……ついでにもう一つお願いが……」 (な、なあ……貴様とあの小娘、一体如何(いか)なる関係なのだ?) 「……それ……答えなきゃいけませんか?」 (い、いや! 無理強いするつもりはない! ただ貴様らは、その……ような気がしてな……)  余計なことを言ってしまったと、慌てて弁明する「怪異」。態度こそ情けないが、その嗅覚は侮れない。 「……そりゃあ似ているでしょうよ……彼女と自分は……元同志ですから」 (元? 今は違うのか?) 「ええ……とてもじゃないけど好きになれませんよ……なんて」 
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