最後のインストゥルメンタルミュージシャン

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 テレビ画面に映っている女の子たちは、いずれも可愛い顔をしている。そりゃそうだ、アイドルグループだから。  このアイドルグループの人数は、四十人以上。いくらなんでも多すぎないか、と思う。  一人ひとりの歌唱力が如何ほどかは知らん。もしかしたら、音痴が何人か混じっているかもしれない。  だが、たとえ音痴が混じっていたとしても、それは帳消しになるだろう。なぜならば、これだけの人数がいれば、音程のずれが相殺され、平均化してしまうからだ。むしろ、個々のずれによって生み出されるコーラスが、いい味を出しているという印象すらある。  このグループのプロデューサーは、頭がいいのだろう。実際、人気が高く、楽曲の売り上げも上々だといわれている。  だが、俺はこのグループをいまいち好きになれない。いや、このグループだけではない、他にもいるこの手のグループ全般が好きになれない。  なぜ、好きになれないのか。  このグループのプロデューサーは、似たようなグループをたくさんプロデュースしている。  プロデューサーによって世に送り出されたアイドルグループは、人気を博し、多数のアーティストを駆逐してしまった。  おかげで、楽曲の売り上げは、似たようなアイドルグループが上位を占め、ランキングはつまらないものになってしまった。  音楽そのものは、プロの中でも手練れといわれる人間が作っているのだから、決して低クオリティとはいえないのだが……  やっぱり好きになれない。  というより、俺は昔から邦楽が好きではなかったのだ。
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